全部はつながっている
~さまざまな仕事を兼任する森さんが考える、仕事において大切な考え方とは~
タキヒヨー株式会社の森 康智(もり やすとも)さんに取材をして参りました。タキヒヨーとの出会いから、森さんが大切にしている仕事における考え方、学生に伝えたい想いなどのさまざまなことをお聞きしてきました!
プロフィール
森 康智(もり やすとも)さん
東京大学文学部を卒業し、東京大学大学院へ進学。大学6年間は個別指導塾の先生を経験。授業や教室の運営全般を任された。2014年にタキヒヨー株式会社に新卒入社し、IR広報を経験した後、現在は採用、採用広報、PR広報などさまざまな業務を兼任。社外ではキャリアコンサルティングやキャリアイベントの企画運営などの活動を行っている。
就活を成功する秘訣は『自分の物差しを育てること』

ーー本日はよろしくお願いします!
まず初めに、タキヒヨーがどんな事業をしている企業なのか教えてください!
森:タキヒヨーはアパレル事業やテキスタイル事業*だけではなく、幅広い分野で事業を展開している繊維商社です。
*テキスタイル事業=毛織物、総合繊維物、ニット物などの各種服地素材をアパレルメーカーや商社向けに生産・販売を行う事業。タキヒヨーは国内だけでなく、欧米を中心に生地の輸出、新素材作りにも取り組んでいる。
ーーもともと繊維商社やアパレルに興味があったのですか?
森:いえ、正直強く興味を持っていたわけではなかったです。僕は業界を絞って就活をしていなかったこともあって、色々な業界の企業を見ていたうちのひとつがタキヒヨーでした。
ーーそうだったんですね!
教育出版系の大手企業からの内定などももらっていたとお聞きしたのですが、大手を選ばなかった背景もお聞きしてみたいです。
森:自分の物差しを育てることを大切にして就活をしていたので、タキヒヨーを選びました。
ーー『自分の物差しを育てる』ですか?
森:はい。自分の中の判断基準を育て、自分自身で道を選択することによって、納得の行く就活ができるのではないかと僕は考えているんです。
ーーなるほど!理由もお聞きしたいです。
森:就活をしていると、企業名だけを見て失敗する人が結構多いんです。僕の周りにも、大企業に行けないと人生終わったって考えている人や、企業名だけを見て就活をした結果、「失敗した」と言っている人を何人も見てきました。
ーー確かにそのように考えている人は多そうです…!
森:なので、働くうえで何を大切にしたいのか、この会社で何をやり遂げたいのか、自分が譲れない条件などをきちんと知ることで、周りに流されずにその先の選択をすることができると思うんですよね。
森:僕も正直どこに就職しようか悩みましたが、大手だからと選ぶのではなく、自分基準でタキヒヨーを選んだからこそ、僕は今後悔せずに働くことができていると感じています。
ーーなるほど!自分なりの考えを大切にして就活をすることが大切なのですね!
森さんの心を動かしたタキヒヨーの選考とは

ーーでは、色々な企業を見ていた中でタキヒヨーへ入社を決めた背景もお伺いしたいです。
森:選考や選考中のイベントを通して、今まで自分が受けてきた企業の中で、一番自分にマッチしていると感じたからです。
ーーどんなところでマッチすると感じたのですか?
森:マッチしていると確信したのは、社長講話会という選考中のイベントに出席した時でした。その時の社長のお話を聞いて、社長が大事にしている価値観や考え方を知り、素敵だと感じたんですよね。
ーー印象に残っているお話があればお聞きしてみたいです!
森:社長が学生に対して「贅沢」について考えさせた後に「贅沢は無駄だけど価値がある。ファッションやデザインも絶対必要なものではないけれど、それが人生を豊かにしてくれたり、それをきっかけに人生が変わる経験をするかもしれない。だから無駄って大事なんだ。」というお話をされていたことを今もはっきり覚えています。
ーーなるほど…! 贅沢についてちゃんと考えたことなかったです…!
森:僕もそうでした。このお話を聞いたときに、無駄が持つ価値に関わることができる事業をしているのがタキヒヨーなんだと分かり、そこに納得感を感じました。
ーー社長の考え方が事業に現れていたのですね。
森:あとは、選考中の相互理解を大事にしてるところもすごく良くて、対話の中で自分自身を見てくれているような、分かり合おうとしている雰囲気にも魅力を感じました!
ーー良い選考ですね!
社長を筆頭にタキヒヨーの会社としての在り方が森さんの考え方とマッチしていたからこそ、タキヒヨーへ入社することに決めたのですね!
『やりたい』という気持ちがあれば任せてくれる!

ーー森さんは現在どのような業務を担っているのでしょうか?
森:PR広報や採用広報、採用、企業のブランディング*に関わること、営業部の支援などを行っています。
*ブランディング=自社の商品やサービス、または企業そのものに対する「顧客からの共有したイメージ」や「独自の価値」をつくり、浸透させるための様々な活動のこと。
ーー幅広く業務に携わっているのですね!
森:タキヒヨーは業務範囲を細かく区切る会社じゃないので、“やりたい”ベースで色々なことを任せてくれるんです。ですから、自分で自分の業務をつくっていく感覚です。
ーー素敵なカルチャーですね!
その中でもメインで携わっている業務はありますか?
森:新卒採用ですね。選考フローから、採用動画のコンテンツ設計、動画のアップ、編集などの、企画から実行まで任せてもらっています。
ーー採用業務を一貫して行っているのですね!
森:そうですね。もっと言うと入社前から採用と育成をしたいと思っていたので、人事や育成制度のプロジェクトなど、人事回りの業務全般にも関わらせてもらっています。
ーー採用や育成をしたいと思ったきっかけがあればお伺いしたいです。
森:6年間アルバイトしていた個別指導塾での経験がきっかけです。
ーーどんな経験をしたのでしょうか?
森:この塾は大きな塾じゃなかったこともあり、生徒がどのようにしたら志望校に受かるのかだけではなく、その後の人生がどうやったらうまくいくのかまで考えて1人1人と真剣に向き合ってきました。人を育てる、人に教えるという面で尽力してきた経験から、これを仕事にしたいと次第に思うようになりましたね。
ーーなるほど!勉強を教えるだけでなく、生徒のキャリアまで支援をしていた経験から感じたのですね!
全部はつながっている

ーー森さんが現在の業務を行う中で、やりがいに感じていることがあれば教えてください。
森:『全部はつながっている』ことにやりがいを感じます。
ーー詳しくお聞きしたいです!
森:様々な経験をすることで自身のレベルがあがり、その経験をまた別の機会で活かすことによって自分なりの独自のオリジナリティをつくりながら仕事をすることができるんです。
ーーなるほど!
森:過去の経験も全部同じで、学生時代の研究の仕方や塾の先生の経験が今の仕事の役に立っていたり、入社当初にIR*の勉強をやらせてもらっていたおかげで、今僕にしかできない採用活動ができていると感じています。
*IR=投資家に向けた広報活動のこと。
ーー過去の経験が全て今に活きているのですね!
森:そうです!考え方の枠組みは色んなところで応用することができるんです。
森:それに、採用の仕事をちゃんとしたいから採用広報をちゃんとしないといけないっていう感じで、全部の仕事がつながっていくんです。なので、結果的にたくさんのことに手を挙げて兼任をさせてもらうようになりました。
ーーたくさん兼任されている背景にはそのような考えがあったのですね!
森:ただ、経験がつながるまでは結構大変で、「なんのためにこれをやっているんだろう」って思う時期はあります。
ーー確かに、理由が分からなくなったら目の前の仕事がつらくなってしまいそうです…。
森:そうですね。でも、いつかは経験がつながる瞬間が来るんです。僕自身何個かつながった経験があってから「いつかはつながるんだ」と思うようになったので、現在はどんなことでもつらいと感じることはなくなりました。
ーーなるほど…!
とても素敵な考え方ですね。
森:名前のないようないわゆる「雑務」も同じで、こんなことをやるためにこの企業に入ったのかってなりがちなんですけど、僕は雑務がすごく楽しかったんですよ。
ーーそうだったんですか!
森:はい。裏方の仕事をしていると、人の仕事が良く見えるんです。そして、採用や広報でこの人のこういう部分を伝えたいって考えた時に、雑務をしている時に見た経験から色んな事が話せるので、この経験も今につながっているんです。
ーーいつかつながるって考えることは、目の前の仕事に対する捉え方にも影響を与えるのですね!
コラボの背景にいる森さんの存在

ーーお仕事をしていて何か他につながったと感じた経験があればお聞きしてみたいです。
森:たくさんありますが、学生団体とブランドとのコラボと、染色工房とのコラボが印象に残っていますね。
ーーそれぞれお話を聞かせてください!
森:僕自身採用をしていると色んな人と絡ませてもらえる機会があって、そのうちの1つとしてファッション系の学生団体と、あるモデルさんが立ち上げたブランドと一緒に、タキヒヨーのサステナブルな素材を使って3者でコラボしたことがありました。
ーーすごい組み合わせですね!
森:そうなんです。採用広報をしていたからこそ学生さんと結びついて、ブランドを持っている方とも一緒にものづくりをすることで商売にもつなげることができました。このコラボ商品がメディアにも載ったので、企業のPRにつながったんです。
ーー素敵です!win-win-winな関係ですね!
染色工房のコラボについても教えてください!
森:染色工房のコラボでもタキヒヨーのサステナブルな素材を使ってもらい、江戸時代から伝わる染め方で染めたバッグをつくりました。
ーーどういった経緯でつくることになったのかが気になります…!
森:この染色工房は、100年位前から職人さんがやってる染色工房で、タキヒヨーの1日仕事体験のインターン先としてものづくりの原理を理解してもらうために現在お世話になっているところです。今までは採用活動でつながっていただけだったのですが、職人さんから東京手仕事*に出展したいってお話を聞いたときに、うちのサステナブルな素材を使いませんかと僕が提案したのがきっかけになります。
*東京手仕事=東京都および東京都中小企業振興公社が推進するプロジェクト。現代の消費者が求める伝統工芸品の新商品を創り出すとともに、国内外に新たな市場を切り開くことを目指し、伝統工芸品の新しい商品開発や、国内外に向けた普及を促進する取組のこと。
ーー普段からお世話になっている企業とのコラボだったのですね!
森:はい。そして、このコラボしたバッグが「公益財団法人東京都中小企業振興公社理事長賞」というとても良い賞を受賞したんです!評価してもらえた結果、パリで行われたジャパンエキスポにも出展することになり、また企業のPRにもつながったということがありました。
ーーすごいですね…!
森:このコラボは直接的に大きな売上につながるものではないので、営業現場は嫌がってもおかしくない話だったんですけど、みんなが「やろうよ」って言ってくれたからこそ実現することができたんです。
ーー社風がよくあらわれていますね!
森:そうですね。そして、この2つとも、ものすごく偉そうな言い方をすると「僕がいなかったらできなかったこと」だと思うんです。採用や広報に携わってきて、営業部とも親密に関わってきたからこそ生まれたコラボだったんじゃないかなって思います。
ーーたくさん兼任してきた結果が、色々な素敵なコラボにつながっていたのですね!
自分なりの目指す場所

ーー続いて、仕事と個人におけるビジョンもそれぞれ教えていただきたいです。
森:仕事においては、自分がやってることを誰にでもできる仕事にばらせるような、仕組み作りをできるようにしたいと思っています。
森:今は兼任でいろんな仕事を任せてもらっていますが、やっぱり1人でやることには限界があります。そんな時にはいつもたくさんの人に助けてもらっていて、その時に上手く仕事を分解することができる人になりたいんです。
ーー的確に仕事を分配できたら仕事の効率もあがりそうです!
森:はい。それに、若い時は自分にしかできない仕事をつくりたいって思ってたんですけど、自分ってなんでもできるぜって思ったらおしまいって突然気がついたんですよね。
ーー過度な自信があると全部の仕事を1人で抱え込もうとしてしまいますもんね…!
森:個人においては、「語り」を自分のひとつのライフワークにしたいなって思ってます。
ーー詳しくお聞きしたいです!
森:今、社内の人や東大のOBやOGの人にインタビューをする機会が多々あって、僕がインタビューすることで、それを見ている人、聞いている人、記事を読んでいる人が喜んでくれるのが嬉しいって感じるんです。
ーーなるほど!それは嬉しいですよね!
森:語ることで、自分なりに語ることの価値やそういう「場」の価値をあげていくことができたらいいなって思ってます。僕が話を聞くことによって初めて出てくるものがあったり、2人が話している間で僕がうまく話を整理してあげることによって、新たな語りが生まれることもあるんです。
ーー素敵です!私も価値をあげれるようなインタビュアーになりたいです…!
学生に伝えたい就活や仕事で大切な考え方とは

ーー最後に、学生へ向けてメッセージをお願いします!
森:『1個1個で100点を狙わないこと』ですかね。
ーー100点を狙わないのですか?
森:半分は僕の雑な性格の言い訳でもあるんだけどね(笑)多少ミスしようが、全体としてOKだったら大丈夫なんです。先に100点に仕上げちゃうと、うまくいかなかったことでそれが減点方式になってしまいます。自分が作っていく中で加点していく方が良いんじゃないかなって僕は思います。
ーーなるほど…!
確かに、先に全て完璧にしていると後で何かあった時にうまくいかなかったところに焦点があたっていた気がします…!
森:もうひとつ伝えたいことは、『見えてる答えを追わない方が良い』ということです。就活の話でいうと、僕が就活の時にやってよかったなって思うことは、わざわざ興味がない業界を見に行ってたことなんです。それでタキヒヨーにも出会うことができました。
ーー業界を絞らずに就活をしていたってお話されてましたもんね!
森:結局見てみて本当に興味がないところもあったけど、それはなんで興味がなかったのかなどを考えることで自己分析を深めることができるし、興味がない理由から、自分はやっぱりこういうことに興味があるんだって再確認することもできます。やっぱり全部はつながっているので、全てが結果的に自分のためになるんです。
ーーここもつながっているのですね…!
心に刺さりました!
森:就活においては採用担当や企業は敵じゃないし、僕らも仲間が欲しくて採用活動をしています。聞きにくい内容でも、表面的な評価を気にするよりは正直に聞いてくれた方が逆に良い学生さんだな、となるので、是非フラットに聞いてほしいですね!
ーー表面だけを気にしていると入社後のミスマッチにもつながりますもんね!
本日の取材は以上となります。とても勉強になる素敵なお話をありがとうございました!
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もっと森さんのお話を聞いてみたい方はこちら!
森さんのTwitterアカウント https://twitter.com/shiganthedigger
stand.fm(音声配信) https://stand.fm/episodes/64e4cba297007b07203a4cc5

事業概要:
創業272年を迎えるタキヒヨーはテキスタイル(服地)からアパレル製品の企画製造卸、ブランド小売ビジネスまでを手掛ける東証スタンダード・名証プレミア市場上場の繊維商社です。
トレンド収集から企画、生産、物流までを一貫して提案・提供できる“総合力”を武器に、レディス、メンズアパレルはもちろん、ベビー・キッズ、スポーツウエアやホームウエア、雑貨に至るあらゆる分野で商品を展開しています。
【タキヒヨーサステナブルの取り組み(特設サイト「TAKIHYO FOR GOOD」https://takihyo.jp/)】
社会課題の解決とビジネスの両立を担う「サステナブルソリューションカンパニー」として、異業種を含めた幅広いパートナーと協業を行っています。
専門チームと各部門との連携により、独自の循環スキーム「NO WASTE」の活用などを通して持続可能な社会の実現を目指しています。
事業内容:
テキスタイル事業
https://www.takihyo.co.jp/business/textile/
各種服地素材をアパレルメーカーや商社向けに生産・販売しています。
近年は単なる服地素材の販売にとどまらず、日本の産地で企画開発をした生地の輸出や、日本有数の生地産地と連携した新素材作りに注力しています。
【ものづくりの拠点、一宮工場】
https://takihyo.jp/materials/bradford-system/
ものづくりの拠点一宮工場では希少な英式紡績機を備え、オリジナル性の高い生地の企画開発を行っています。
アパレル卸売事業
https://www.takihyo.co.jp/business/apparel/
レディスファッションをはじめとして、ベビー、キッズ、メンズ、ホームウエアまで、トレンド収集から企画、生産、物流までを一貫体制で担い、衣料品専門店や量販店など幅広い販路に展開しています。
小売事業
https://www.takihyo.co.jp/business/retail/
ゴルフブランド「ZOY(ゾーイ)」「WAAC(ワック)」「G/FORE(ジーフォア)」、メンズウエアブランド「BOB(ボブ)」などのブランドを小売展開し、ファッションにとどまらないライフスタイルの提案を行っています。
経営理念 :
「われわれは夢のあるおもしろい企業を創り、
心の豊かな社会をめざします」
インタビュアー:林由宇人
ライター:安部希美