インタビュアーより:
今回は株式会社レトリバの中でもかなり異色な経歴を持つ髙瀬さんに取材してまいりました。ギタリストやプロボウラーを目指されていた、髙瀬さん独自の思考は「仕事を効率化したい」「新しい挑戦をしてみたい」と考えている人には参考になるお話ばかりです!
プロフィール
大学を中退しジャズギタリストとして活動。その後、プロボウラーを目指す。30代で医学翻訳の企業へ入社。その会社で営業とエンジニアの経験を積む。そして自然言語処理の分野に興味を持ちレトリバへ入社。現在はYOSHINA事業部のインフラチームリーダーを務める。
サービスの成長を加速させるインフラチーム
現在の業務内容を教えてください!
YOSHINA事業部のインフラチームを立ち上げた流れで、インフラチームのリーダーをしています。
あまりなじみがないのですが、インフラチームってどういうことをされているんですか?
簡単に言うと、YOSHINAのお客さん環境の運用に関わる全部です。新しくお客さんが来たら、YOSHINAの環境を立てたり、毎月YOSHINAをアップグレードしたり、契約が終わったらお客さんのYOSHINAを破棄したりとか…。他には開発チームが実装してくれた新しい機能のリリースから、お客さんに届ける流れを改善するっていうのもあります。まだありますがこんな感じです。
なるほど!
サービス開発や運用のスピード、安定性を上げるために重要なポジションというイメージです。
そんな感じですね。あとは開発チーム・CS(カスタマーサクセス)のチームを繋いでいて、例えばお客さんから「なんかエラーが出ちゃいました」っていう意見をCS(カスタマーサクセス)にいただくんですね。で、私たちはそれを受けてバグの原因調査をして、すぐに直せるものなら私たちが改善していますね。
インフラチームがいるとトラブルに対する対応速度も上がりそうですね。
そうですね!あとは、トラブル対応もそうですがお客様の要望に合わせてYOSHINAと連携するツールを作ってあげるとか、そういうこともやっています。
『ジャズギタリストからエンジニアへ』特異なキャリアをひも解く
インフラチームは、開発、運用、お客様対応を万能に行うポジションという印象なのですが、そういった、様々な事象に対応する能力はどのように形成されたのでしょうか?
んー、昔からいろいろやっていたからですかね?
是非、経歴をお伺いしたいです!
まずですね、大学は立教大学の文学部英米文学科に在籍していたのですが、途中で辞めて、ギターリストを目指したんです。
ギターリストですか!?
はい、18歳くらいから都内でフリーランスのジャズギタリスト活動をしていました。
で、24歳か25歳位の時に、色々あって、ジャズギタリストの活動一回ストップさせて、その時働いていたボウリング場に就職したんですよ。
え!そうなんですか!
そうですね。それでたくさん練習しているうちにボウリングにハマりまして、プロを目指し始めるんです。
あ、もうついていけないです(笑)
まあこういった人だったんですけど(笑)ただ、ボウリングのプロテストを3年連続で落ちちゃったことと、結婚して子供が生まれたこともあったので「ボウリング場で夜勤しながらプロを目指す」といった働き方を変えようと思ったんです。
なるほど…!そこからどのような仕事を始めたのですか?
そこから医学翻訳、医薬とか医学とかの翻訳の会社に入りました。
180°の方向転換ですね!
なぜその会社への就職を決めたのですか?
なんだろうね。大学時代、英米文学科だったし、ジャズが好きだったので、英語にも親しみがあって、「翻訳面白そうだな」って感じですね。
納得しました(笑)
ボウリング場からどうやって、転職しようかなって悩んだ時にオファーを出してくれたのが、翻訳の会社だったということで「じゃあ、行くか」ってノリもありましたね。これが大体30歳ぐらいのころですかね。
医学翻訳の会社ではどんなお仕事をされていたんですか?
法人営業です。製薬企業さんを中心に翻訳サービスを提供したり、製薬企業の中のデータ入力作業をお手伝いするチームにヘルプに入ったりしていました。
ここから、どのようにエンジニアの道に繋がっていくのでしょうか?
当時の会社では製薬企業に駐在しながら、薬剤の副作用に関する報告書を英訳して、毎日50本60本って納品するんですけど、この翻訳手配とか納品管理とかが結構辛くてですね。
というのも、この翻訳の進捗管理業務をめっちゃ人力でやっていたんですよ。エクセル表のステータスを変えて、行の色を変えてー…とか。
確かに大変そうですね。
その業務のせいで、なかなか家に帰れないと。帰れないので子育てが辛いと。
なので、どうにかこうにか業務の効率化をできないかって考えたときに今の業務を自動でやってくれるようなアプリケーションをAccess VBAで作っちゃおうと思ったんですね。
ご自身で、0から作られたんですか!?
はい、調べながら。
凄いです!そこで初めてシステムとか開発っていうところに触れるんですね。
そうですね。必要に応じて、自分で作ったっていうところがきっかけですね。それから「システム管理部で開発やりませんか」っていう、IT部門から声をかけてもらってエンジニアとしてのキャリアが始まりましたね。
ジャズギタリストからエンジニアへの繋がりが見えて、凄くスッキリしました。未経験の領域でも0から挑戦できるところに髙瀬さんの魅力を感じました!
『コーヒー』に引き寄せられレトリバへ入社
では、エンジニアに転向されてからどのような経緯で、レトリバに入社されるのでしょうか?
翻訳会社のシステム管理部で開発から運用をやっていく中で、もっと機械翻訳、自動翻訳とか、自然言語処理のテックを活用したいと思い社内で取り組んでいました。少しずつ知見を深めていく中で自然言語処理の専門のソリューションを扱っているIT企業でもっとやりたいなと思っていたところ、レトリバを見つけたという経緯です。
採用時に印象に残っていることがあれば教えてください!
印象的だったのは、オフィス見学をした際に本棚を見ていたんですよ。技術書が並んでいて、「言語処理勉強している会社だなあ」と感心したところに、『田口護のコーヒー大全』がドンと置いてあったことですかね。
確かにインパクトありますね(笑)
髙瀬さんはコーヒーがお好きなんですか?
はい。自分でコーヒー豆の焙煎とかしちゃうくらいにコーヒーが大好きなんです。
それで、田口護(たぐち まもる)さんは日本のコーヒー界では神様的な人なんですけど…、その人の本がある、しかもバリスタセットが一式あるってことで、「ここにはコーヒー好きの、田口護さんをしっかりと押さえている猛者がいるな」っていう匂いを感じたんですよね。
なるほど、同種の匂いを嗅ぎつけたんですね(笑)
ですね。これは何か縁があるんじゃないかなと思いました。今振り返ると入社を決めた理由にもなっていると思います。
ちなみに、そのコーヒーの猛者は誰だったんですか?
今、YOSHINA事業部とは別で、TSUNADE事業部というところでご活躍されている岩田さんです。岩田さんは、選考時にコーディング試験でレビューをご担当してくださったのですが、その時からなんとなく田口護を押さえていそうな雰囲気を察知しまして、入社後に確認をしたところ岩田さんだったので、判明したときは嬉しかったですね。
面白いです(笑)
レトリバさんは取材をしていて、尖った趣味をお持ちの方が多いと思っていたので、そういう個性的なところも会社としての魅力なのかもしれないですね!
『なんでも屋』のポジションを作りにいく
では、入社されてからどのような流れで、インフラチームリーダーになられたのか教えてください!
入社した当時は、事業部が分かれていなくて「開発グループ」という形でひとくくりだったんですけど、分析系の製品開発に携わっていました。
主に製品のメンテナンスをやっていました。だいたい入社から半年くらい経った時に鷺坂*さんを中心にYOSHINAが始まって、初期メンバーにアサインしてもらった、という流れですね。
*鷺坂さん=YOSHINAプロダクトオーナー
当時、新規事業だと思うんですけど。声がかかった時はどんな感情でしたか?
0から製品を作る場所に居合わせるのは、ものすごいラッキーだなと僕は思ったので、呼んでいただいてありがたいなあっていう感じでしたね。
髙瀬さん的には、なぜ声をかけていただいたと思いますか?
んー。僕自身はコミュニケーション能力が高いとはあまり思ってないんですけど、こういうノリなんで、「深い技術持ってないけど、髙瀬いたら和むから入れとけよ」くらいな感じで声をかけてくれたのかなと思っています。
和むっていうのは、わかる気がします(笑)
チームの相性っていうのもあると思いますけど、正確なところは鷺坂さんに聞いていただいて…。
わかりました!
YOSHINA事業部の立ち上げで、かなり大変だったと思いまが、実際どうでしたか?
予定調和ですべてがまとまることが、そんなに好きじゃないタイプなんで、カオスな場所が結構好きというか…、願ったり叶ったりでしたね。開発の最初っていうのは。
立ち上げ特有のカオスな状況を楽しまれていたんですね!
ちなみに鷺坂さんからは「本当に髙瀬さんって何でもできるんですよ」とおっしゃられて
て「無茶ぶりも一つ返事で受けてくれて感謝しています」とのことでした!
ありがたいなぁ。本当に何でもできる人って武井さん*みたいな広く深い技術を持っている方をいうんですけど。僕はですね、何でもできるんじゃなくて、断れないんですよ。
※武井さん=株式会社レトリバ 最高技術責任者(CTO)
そうなんですね!
はい。断り方を知らないだけなんですよ。
で、「髙瀬さんこれやってくれる」って言われた時に「やれませんとか言うのもなんだしなー。技術的にはできそうだけど」って思うとついつい引き受けちゃうんですよね。
なるほど。その中で、苦労した依頼とかありましたか?
そういう意味では誰からの依頼というより、自分のポジションが大変だったかなー。
というと?
今でこそチーム体制が整って、冒頭お話ししたように僕はインフラ業務にある程度専念できているんですけど、例えばリリースしたての頃は製品にエラーがあって、お客様から連絡を受けても開発チームに「調べてね」って投げるんじゃなくて、自分で調べてお客様とやりとりしながら、全部解決まで導く必要があったんです。
なるほど。
チームにも人出が少ないので、『なんでも屋さん』のポジションが必要だったです。なので、お客様の対応、営業チームへのサポート、開発、インフラ運用、全般をほぼ1人でやっていました。
かなり大変そうですね…。
『なんでも屋さん』のポジションを自分で作りに行ったので、緊急度高いけど、すぐに動ける技術者がいない、みたいな状況の業務が集まってくるんですよ。
例えば、致命的な不具合がお客様から報告されて、早く原因調査しないといけないっていうところに新規導入時のセキュリティチェックとか別の優先度MAXな業務がドンドンと入ってくるって感じでした。
なので、ポジション的な意味で辛いことはありました。…ただ、こういったカオスな状況は好きなので、楽しかったんですけどね。
そういった状況を乗り越えた結果として、今のインフラチームリーダーというポジションがあるんですね!
カオスな状況を楽しむ
ちなみに、どちらか選べないくらいの優先度MAXの業務たちはどうやって処理したんですか?
千手観音になるっていう。
凄そうですね…!
どれも優先度MAXの場合は、タスクを並列して、スケジューリングするんです。それで、一個ずつ終わらしていくのではなくて、「これをここまで」「これをここまで」っていう切り替えをしながらやっていますね
全て同時に着手するってイメージですね。
あとは、鷺坂さんの方もその辺の事情は分かっているので、「ごめん、あれは後回しでいい」っていうのを伝えてくれるのも非常に助かっています。
なるほど。理屈は分かったのですが、髙瀬さんのタスク処理力はズバ抜けていると思っていて、他にも実践していることがあれば教えてください。
聞こえはあんまりよくないんですけど『期待値調整』という技もあります。
大事ですよね!
大事ですね。最初の段階では「ちょっとできるかどうか分かりません、最善を尽くします」と言いつつ、難易度は自分の中では50%ぐらいだったりします。さらには、できそうだと思った期日よりも1~2日多めにみてスケジュールを調整しますね。
遅れちゃうよりはるかに良いですし、余裕がないと仕事続けられないですよね。
ここまで、方法論的なお話をお伺いしてきましたが、仕事に対するマインド面で大事にされていることってありますか?
しいて言えば、仕事を楽しみたいと思っていますね。
どういった状況だと楽しめるんですか?
自分でも分かんないんですよね。ただ、分かんない方が良いのかなと僕思っているんですよ。最近。
分かんない方が良い?詳しく聞きたいです!
「これが楽しいんだよ」ってわかっちゃうと、それがなくなったら楽しくないっていうことになっちゃうわけじゃないですか。案外、わかんないままやるっていうのが大事なんじゃないかなって。
僕はさっき、カオスな状況を楽しむって言ったんですけど、「これやるべきだけど、どうやったらいいのか分かんないよね」っていう課題は常にあっていいんじゃないかなって思っています。
なるほどですね。
やるべきことも、やり方も分からない環境を楽しまれていたからこそ髙瀬さんの問題解決の早さや、状況整理などの能力がズバ抜けていったんじゃないか?と感じました。
生存バイアスで成長したんですかね。
成長の秘訣は「生存バイアス」ですか!
しっくりきました(笑)
仕事を支えてくれるメンバー
最優先のタスクがバンバン降ってくる中で、「この人に助けられたなー」っていう方がいたら教えてください。
もちろんみんなに助けられてるんですけど…。野本さん*が優秀過ぎて、いつも頼らせてもらってます。
※野本さん=開発チームリーダー
詳しく教えてください!
野本さんの優秀さは、コンピューターサイエンスが強いって言うだけじゃなくて、マネジメントスキルが高いんです。僕がインフラチームに専念できているのは開発チームに野本さんがいるからなんですね。いい意味で開発チームの状態まで気に掛けなくて大丈夫という。
頼もしいですね!
あとは開発で分からないことは野本さんに相談すればなんとかなるだろうっていう信頼もあります。
…というのも、野本さんはお客様の要求とYOSHINAっていう製品自体のあるべき姿を良い感じに、汲み取る能力があるので、野本さんの判断は納得性が高いんですね。随所でそういうところのセンスがほとばしってますね。
なるほど!
エンジニア目線とお客様目線の両立が頼もしさの根底にあるんですね!
ちなみに、野本さんも「髙瀬さんがいるおかげで開発に専念できるんです」とおっしゃっていたので、本当に素晴らしいチームワークだなって思っていました(笑)
そうなんですね。ありがとうございます。
あとは鷺坂さんにも感謝しています。僕が「ちょっと無理かも」と思ったら無理っぽそうなオーラを出すんですよ。
その時は「ちょっと期限を後ろに伸ばして」みたいな、調整をしてくださりますし、もっと言うと、体中から訴えなくても察してくれるところは確実に働きやすさに繋がっています。
さきほど「断るのが苦手」とおっしゃられていたことを考えると、鷺坂さんのように察してくださる方の存在は大きいですね…!
目指すはレスポンス最速チーム
続いて、髙瀬さんの考えるチームの将来やYOSHINAの将来像について教えてください!
YOSHINAという製品の魅力の一つとして、「サポート対応めちゃくちゃいいよね」って言ってもらえるような運用ができるチームにしたいです。具体的にはレスポンスの速さにこだわりたくて、お客様からのお問合せに対するレスポンスや、営業からの問い合わせを捌くとか、CSチームと開発チームとの間で調整しないといけないことを動かすとか、そういう全体を促進するためのレスポンスの速さを追求していきたいですね。
速さにこだわる理由は何でしょうか?
エンジニアの人って一つの作業に深く集中したい局面が多いので、レスポンスが遅くなりやすいんですね。でも、営業からの連絡って、目の前にお客さんがいるからすぐ回答が欲しいはずなんですよ。僕も営業をやっていたので分かるんですけど、そこをうまく拾ってあげられるチームでありたいなと思いますね。
なるほど!
インフラチームのレスポンスが速まることで、サービスの成長もお客様の満足度も上がるイメージか付きました!
そうですね。サポートが手厚いっていう製品というイメージも確立したいと思っています。
メッセージ
最後に読者へ向けたメッセージがあれば教えてください!
僕のキャリアが特殊なので「物事を始めるのに遅いってことはない」っていうことを伝えたいですかね。
説得力あります!
例えばレトリバって、コンピューターサイエンスのマスターたちがたくさんいるんですけど、それをみて「無理だ…」って思わないでほしいんです。
無理なことは無くて、自分の良さっていうのは積極的に仕事をすることでいつだって発揮できるということを伝えたいです。自分の個性を前向きに活かしてチーム全体を良くしようとしていく中で、技術やスキルはどんどん伸びていくと思っています。
髙瀬さんのキャリアがそれを証明していますよね。
そうですね。30代からエンジニアになりましたし、最近はいろいろあって自分の服を作りたくて裁縫を始めましたし、物事を始めるっていうのが遅すぎることはないっていうことを大事にしていきたいなと思っています。
素敵なメッセージをありがとうございます!
いま、初めての挑戦に苦戦している人たちに髙瀬さんのメッセージが届いたら嬉しいです!
本日はありがとうございました!
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株式会社レトリバ
事業概要:
株式会社レトリバは「AI技術で、人を支援する」をモットーに自然言語処理を使ったAI技術で、人の創造的な仕事を支援している企業です。
A自然言語処理、機械学習、深層学習の技術をコアにお客様の課題を最適な技術で解決することを事業目的に事業を展開しています。
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インタビュアー: 伊藤 香輝 (キャリツク)
ライター:伊藤 香輝(キャリツク)